「前払いすれば家賃が半額に」市営住宅の自治会長が住民たちから不正集金 信頼されていた人物が…集金の後に消えた(FNNプライムオンライン)

 2023年7月30日
2023年7月30日13時00分付け 「FNNプライムオンライン」記事が公開されました。

市営住宅で、自治会長が嘘の「家賃優遇話」を持ち掛け、
住民たちから1千数百万円を騙し取ったニュースです。

自信の立場を利用して、周囲の人を信用させたうえで、
「家賃をまとめ払いすると半額になる”枠”がある」という、あり得ない話を持ち掛けて、
お金を騙し取ると言う、極めて悪質な詐欺事件です。

通常ならば、「家賃を実際の大家さんや管理会社以外に支払う」のはあまりにおかしな話で、
その際に管理者にも確認したり、支払う相手に領収書をもらったり、しっかりした手順を踏むのが普通ですが、
相手の便宜によって「自分が得をする」話なので、
あまり確認するのも失礼だし、得をする話がなくなると損をする、と思わせるように誘導したのでしょう。
この計画性も含め、悪質な犯行だと言えそうです。

あらゆる投資詐欺や還付金詐欺などでも同様ですが、
「自分が得する話」を「持ってきてくれた人」「仲介してくれる人」に関しては、
気になることがあってもちゃんと確認できない、お金を預けた証憑も要求できない、
というのが、騙される最大の原因となっています。
お金に関することは全部確認して納得させてもらう、というのが全ての詐欺回避の基本となりますので、
相手を信頼していても、いや信頼しているからこそ、この点に関してはちゃんと明確にしましょう。

ちなみに記事中にもありますが、公営住宅で「まとめ払いで家賃を半額に割引」するような制度は存在しません。
そうでなくても、契約書に書いてある家賃の振込先以外に家賃を振り込む際には、
契約書や確認書などの、署名捺印した書面が必要ですので、このような詐欺には毅然と対処しましょう。

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「前払いすれば家賃が半額に」市営住宅の自治会長が住民たちから不正集金 信頼されていた人物が…集金の後に消えた

市営住宅の有志でつくられる自治会、そのトップの自治会長が「家賃をまとめて前払いすると安くなる」と市営住宅の住民たちに話を持ち掛け、不正に金を集めていた。その被害額は数千万円規模にのぼるとみられる。住民たちの信頼を悪用した、驚くべき手口とは?

■信頼する自治会長に持ち掛けられた“家賃前払い”
大阪市にある、築35年以上、全世帯数100戸ほどの市営住宅に妻や子どもたちと15年前から住んでいる会社員のAさん(48)。被害に遭ったきっかけは、6年前、市営住宅の住民たちがつくる自治会の会計担当になったことだ。

被害に遭ったAさん:
(自治会長は)当初は何でもやってくれる、子どもの見守り隊とかもやってくれるし、本当に「パーフェクトな人が来たんちゃうかな」っていうぐらいの本当にすごい方でした、その時は。見た目は本当にいかついんですけど、しゃべったら優しい部分もあって、話がすごく好きな方で

年齢は60代半ば、丸刈りで恰幅(かっぷく)がよく、少し強面な見た目の自治会長N氏。

以前、自転車置き場をめぐって、大阪市に整備をするよう掛け合うなど、自治会長として実行力のあったN氏。AさんはそんなN氏を信用していた。

ある日、Aさんは自治会長N氏から市営住宅の中にある集会所に呼び出された。

N氏は「何人かに話をするけど先に言っておく。家賃を何世帯かまとめて払ったら、管理センターが家賃を半額にしてくれる。センターから話があったが、誰にも言わんといてくれ」と話した。

自治会長から突然持ち掛けられたのは、「家賃が半額になる」という話。

その仕組みは、自治会長N氏が月々の家賃が半額になると言って住民たちから家賃の半額を前払いさせ集金。その集まった金を自治会長N氏がまとめて大阪市に納めると、その翌月から大阪市への家賃支払いがなくなるというものだ。

つまり、事前に自治会長N氏に金を払えば、月々の家賃が半額で済むようになるという話だ。

■被害者Aさんの印鑑も不正使用か
Aさんはなぜ、そんなうまい話を信じてしまったのか?

被害に遭ったAさん:
本当に純粋に僕はうれしくて。「安くなる」って。まだN氏を信じていたので。これに関しては「複数名、数名だけいける。家賃減額の対象になります」と

AさんはN氏に2カ月分を先払いしたにもかかわらず、大阪市からも家賃は引き落とされていた。

被害に遭ったAさん:
全員の5、6人の“減額家賃”の集金が終わって、全員のお金が集まってから減額がそのあとに始まるって言われたんで、大阪市から続く引き落としは当然やと思っていました。管理センターに電話したりとか、ほかの人に言ったら全部パァになる。お金も集まらなかったらパァになるからって

言葉巧みに家賃減額を信じさせ、口止めまで…自治会長N氏を信用しきっていたAさんは、合計19カ月分の家賃の半額、約60万円を渡した。

しかし、2022年に住宅を管理する大阪市から「家賃が半額になることはない」という趣旨の文書が届き、全てうそだったことが発覚。詐欺に遭ったとして警察に被害を訴えている。

さらに、自治会長N氏は他の住民から不正な集金をするときに、自治会の会計担当だったAさんの名前を無断で使っていたこともわかった。

被害に遭ったAさん:
僕が知らない間に勝手に名前を書かれて、印鑑も僕は貸してないので、勝手に自身で買って、印鑑押している感じですね。僕も下手したら犯罪者になるところだったので、それは本当に許せない

Aさんは被害者であるにもかかわらず、N氏とともに住民から金を集めている人物であるかのようにされていた。

■“前払いで家賃半額”は存在する?
そもそも前払いすることで家賃が減額される制度はあるのか?住宅を管理する大阪市住まい公社が取材に応じ、きっぱりと否定した。

大阪市の担当者:
そもそも家賃決定につきましては、毎年度、入居者の皆さんから申告された収入に応じて決まっていくもので、大阪市が決定するという形になっております。自治会の役員さんが家賃に介入するとか“前払い”制度は一切ございません

Aさんに対する自治会長N氏の説明は、やはり作り話だった。

同じ市営住宅に1人で暮らしていたBさん(74)も被害に遭った1人だ。年金暮らしで老後の生活や将来に不安を感じ始めたころ、自治会長N氏から「家賃が半額になる」という勧誘された。

被害に遭ったBさん:
最初は大阪市から家賃が引かれても、N氏にお金を渡さなあかんのかなと思ったのは思ったんですよ。それで、私が大阪市の方に問い合わせたら良かったんですけど、それをしないで言われるままにね…。家賃を安くしてもらったら、私も楽になるしね。そんなこと考えて子どもにも連絡相談もしなかったんです。1人で考えこんでいて…

自治会長N氏は必ず2人きりのときに集金し、Bさんは家賃の支払いを断ることができない状態になってしまった。

その後、Bさんへの集金はエスカレート。「自治会特別会員」や、「住宅のリフォーム代」などさまざまな名目で、合わせて約200万円を自治会長N氏に渡してしまった。

ーー200万円はどういう金?

被害に遭ったBさん:
今まで働いてきたお給料とか保険とか。それだけしか貯金はないんですよ。それだけ大事なものやのに、何でそんなことしたのかな、今思ったら。これから先どんな出費があるかわからないでしょ。病気になったりするかわからないし許せない。絶対返してほしい

Bさんは貯金が底をつき、家賃が安い別の住宅に引っ越しせざるを得なくなった。

■自治会長の不正集金 打つ手はないのか?
住宅を管理する大阪市住まい公社によると、自治会長N氏は、これまでに少なくとも12人から合わせて1,500万円を不正に集金していたことがわかっている。何か打つ手はないのか。

大阪市の担当者:
自治会は、入居者の皆さんが自主的に運用している組織ですので、基本的に市が監査とか指導とかが直接言える立場ではない

一方で、被害相談が相次ぐことを受け、自治会長N氏に対しては…

大阪市の担当者:
接触をして、状況を聞かなければいけないということで、電話もしくは文書でアプローチをしているんですけれども、いまだ対応していただいていない状態ですね

■大阪府警「被害相談あるのは事実」
自治会長N氏は今どうしているのか。関西テレビ取材班が自治会名簿に登録されている番号に電話をしてみたところ、「おかけになった番号に電話をしましたがお出になりません」とアナウンスが。

N氏は今も市営住宅の住民だが、住んでいる人たちによると、数カ月前からほとんど帰ってきておらず、その姿を見かけなくなっているということだ。

大阪府警は、今回の件について被害相談を受けていることは事実だと認めた。

自治会長の立場で、住民たちを信用させ、詐欺まがいのやり方で集めた不正な金。果たして住民のもとに返ってくることはあるのか。

(関西テレビ「newsランナー」2023年7月20日放送)
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記事リンク(引用元・画像あり)はこちら→https://www.fnn.jp/articles/-/562998
 
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