特殊詐欺は時に命をも奪う 家族で備えを(産経新聞)

 2023年8月14日
2023年8月13日09時00分付け 「産経新聞」記事が公開されました。

特殊詐欺で悪いのは、言うまでもなく「人の善意に付け込んで騙し、お金を奪う詐欺犯」です。
しかし騙されてしまった本人に対して、家族がやり場のない怒りをぶつけてしまうこと、
或いは本人が自分を強く責めてしまう場合も多いと言われています。

本人は、家族を助けるため、或いは家族の状況が良くなると信じて、
「家族を思う優しさ」から行動する場合がほとんどなのに、
それが一転して「家族に多大な迷惑を掛けた」ことになってしまう。
そして場合によっては家族に責められてしまう、という状況。
この上ない悲劇と言って良いでしょう。

場合によっては「自死」すら選択肢に入ってしまうこの悲劇を、
家族で、そして社会全体で、なんとか防いでいきましょう。

なによりも詐欺犯が悔い改めて犯罪を止めるのが一番ですが、
まずは家族が連絡を取り合って、
「家族からお金に困った連絡をされた場合でも、すぐに振り込まず自分から電話を掛け直して相手を確認する」
「現金を渡す場合は、手渡しか、事前に知っている口座への振り込みだけにする」
「とにかく電話でお金を振り込む要求をされた場合は、すべて詐欺であると判断して、家族か警察に相談する」

などの原則を確認しましょう。

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特殊詐欺は時に命をも奪う 家族で備えを

老後に向けて長年蓄えた大切な金を短時間で奪っていく悪質な特殊詐欺。警察当局は犯行グループの摘発や被害防止対策に力を入れるが、被害は後を絶たず、令和4年の被害額は8年ぶりに増加に転じた。失うのは現金にとどまらず、家族との信頼関係や時には命に及ぶことさえある。支援団体は「特殊詐欺は間接殺人」と非難し、被害に遭わないように日頃から家族全体で備えることの大切さを訴えている。

《これから楽しく出来(る)と思っていたのにこんな事をして皆なに迷惑をかけてしまう。私は一生こんな悪い人間で命ある限り過(ご)していくのかと思うとなさけない》。特殊詐欺被害に遭った女性は忸怩(じくじ)たる思いを日記につづった。

女性に、銀行員を名乗る男から宝くじで約3億円が当せんしたと電話があったのは平成26年。女性は「息子の事業を助けることができる」と喜び、送金手数料などの名目で当せん金額の1割を事前に支払う必要があるとの言葉に従い、友人や知人に借金するなどして約3千万円を送金した。

《明日から私は幸(せ)になって毎日が明るく楽しい毎日がすごせる》。当せん金が支払われるという前日の日記は、未来への希望に満ちていた。だが翌日に振り込みはなく、詐欺に遭ったことに気付いた。

《皆さ(ん)によろこんでもらえると思っていたことが全部悪い事になってしまった》《一生のうち一番つらい日でした》。女性は絶望を吐露し、自分を責め続けた。

■「被害者を責めてはいけない」
女性から日記を預かったNPO法人「自殺防止ネットワーク風」(千葉県成田市)の篠原鋭一理事長(78)によると、女性は電話相談で「もう自分の生きていく場所はない」と漏らした。篠原さんらの説得で、最悪の選択をすることはなかったが、80代で亡くなるまで「私が悪かった」と気に病んでいたという。

特殊詐欺被害に遭った高齢者が親族に責められるケースは少なくない。「孫が売り上げを盗んだ」という電話を信じ、400万円を詐取された男性は、家族から「遺産をなくした」などと叱責され、自ら命を絶った。男性の妻も《お父さんのところへいきます、ごめんなさい》との遺書を残し、後を追ったという。

特殊詐欺が金品の詐取だけでなく、周囲から責められたり、自身を責めたりして、死を選ぶという副次的な被害を生むことも踏まえ、篠原さんは「間接殺人だ」と指摘する。

篠原さんは「被害に遭うのは家族を思う優しさ、役に立ちたいという気持ちによるもの。悪いのは加害者で、被害者を責めてはいけない」と強調。「特殊詐欺は日本の社会構造が生む犯罪で、解決策が見つからないのは日本国民の連帯責任だ」と訴える。

■大半が固定電話端緒に被害
被害はどうしたら防げるのか。警視庁によると、今年上半期に起きた特殊詐欺事件1402件のうち、8割超の1143件が固定電話への電話を端緒に被害を受けていた。孫や子をかたる「オレオレ詐欺」では、その割合がさらに上がるとみられ、警視庁幹部は「知らない電話や非通知からの着信に出ないことが重要だ」とする。

親族や友人ら以外の電話を区別するため、警視庁が高齢者らに推奨しているのは、着信のあった電話番号を表示する「ナンバー・ディスプレイ」と、番号非通知の着信を拒否する「ナンバー・リクエスト」だ。NTT東日本と西日本は5月以降、70歳以上の契約者と70歳以上と同居する契約者には、月額利用料と工事費を無料としている。

警視庁の担当者は「高齢者だけでなく、現役世代も特殊詐欺について知識を持ち、子供たちから両親、祖父母に注意喚起する機会を持つようにしてほしい」と呼びかけている。(宮野佳幸)
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記事リンク(引用元・画像あり)はこちら→https://www.sankei.com/article/20230813-DVYZZABEN5NLPC2KHLEJWOMSXE/
 
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