アングル:ロマンス詐欺に手を染めるガーナの若者、貧困からの転落(REUTERS)

 2023年8月20日
2023年8月20日8時19分付け 「REUTERS」記事が公開されました。

以前こちらのニュースで、ナイジェリアにおける国際ロマンス詐欺についての記事を取り上げたことがありますが(↓)、
ついに、正体がバレた…!『ヤフーボーイ』と呼ばれる、アフリカの「国際ロマンス詐欺集団」その”ヤバすぎる実態”の全貌(週刊現代)
今回はガーナでの国際ロマンス詐欺についての記事です。

両国共に、全体として巨大な組織になっている訳ではないようですが、
小規模な詐欺グループが無数に存在し、それぞれの手口を模倣しアレンジしながら、
全体としてどんどん巧妙な詐欺手法が開発され続けている模様。
ある意味、自由主義経済における一つの「産業」のような成長を遂げている現状を伝えています。

ガーナの首都アクラは、人口200万人を超える大都市ですが、
郊外にはスラム街が広がり、廃棄物から売れるものを拾い集めて生計を立てている貧困層の存在も報じられています。
外務省の「海外安全ホームページ」にも、近隣国においてイスラム過激派組織によるテロ事件が頻発していること、
またそれに伴いガーナの治安が悪化し、外国人相手の強盗・窃盗・誘拐事件などが頻繁に起きていることも掲載されています。
ガーナの危険情報【危険レベル継続】

この中にあって、「国際ロマンス詐欺」に手を染めることは、唯一の自分や家族を貧困から救い出す方法なのでしょう。
この記事にも「1年以内に詐欺から足を洗うべく、大学進学資金を毎月積み立てている」とありますが、
その積立金ももちろん詐欺被害者から騙し取るものです。
このような「先進国の富裕層からお金を奪う」ことに何の躊躇もないガーナの若者の価値観を変えるには、
ガーナの社会構造自体を変える、引いては世界の格差をなくすことが必要なのでしょうが、あまりに時間が掛かり過ぎます。

つまりこのような詐欺から身を守るには、とにかく「会ったことがない人に、お金を振り込まない」という自衛しかありません。
会ったことがないモニター・スマホの中の”恋人”に”課金”するのは、全部虚構でも我慢できる、趣味の範囲に限定しましょう。

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アングル:ロマンス詐欺に手を染めるガーナの若者、貧困からの転落

[アクラ(ガーナ) 15日 トムソン・ロイター財団] - 西アフリカ・ガーナの首都アクラで暮らすカシムは、10代の頃には学校のサッカーチームのエーストライカーで「スターフレックス」の愛称で呼ばれていた。

しかし、22歳の今は学業もサッカーも捨て、夜通しオンラインで国際ロマンス詐欺の被害者を見つけては、誘惑することで生計を立てている。

寝室では、スターフレックスとその友人のスレイマン(19)、パトリック(18)の3人が携帯電話やノートパソコンの周りに集まり、出会い系サイトで知り合った被害者候補の「友達」と親密なメッセージをやり取りしていた。

フェイスブックやインスタグラムを渡り歩いてインフルエンサーや女優などの写真を失敬し、出会い系サイトの偽アカウントを作り、結婚相手を探している男性をひっかける。

スターフレックスは、トムソン・ロイター財団に「買い物や料理、友達と遊んでいるところの写真や動画を使って、アカウントを維持している」と手口を明かした。

ガーナでは学校を中退した若者がソーシャルメディア上で個人情報を盗んだり、国際ロマンス詐欺に手を染めるケースが増えている。

ガーナのサイバーセキュリティ当局によると、今年に入ってからのなりすまし詐欺による被害額は、推計4950万セディ(約6億4000万円)に上る。

スターフレックスはトルコ出身の23歳の女子大学院生ジョーンを装い、出会い系サイトで知り合った米国人の不動産業者とチャットしている。不動産業者はジョーンの両親が新型コロナウイルスで亡くなったと信じ、彼女が国外追放されないように5000ドル(約73万円)の学費を負担する気だ。

スターフレックスは「やつは米国から毎月500ドルの生活費を送ってくる。ガーナで1日に50ドルも稼げる仕事なんてあるか?」とほくそ笑む。送られてきたお金は仮想通貨ウォレットで現金化し、シフト制で詐欺を働く仲間と分け合うという。

こうした詐欺が広がる背景には、数十年にもわたるガーナの経済危機がある。貧困が続き、若者の失業率は30%を超える。

「アクラ周辺のスラムでは、子どもの10人に8人がネット詐欺に足を踏み入れている」と、アクラの公立校でITの教師をしているクワドォ・アゲマム氏は話す。「彼らの携帯電話を調べるだけで、ネット上で男性を誘惑するために使うヌード写真が見つかる」─。

<貧困の痛み>

スターフレックスとスレイマンは、アクラ周辺の貧困地区で育った。2人とも経済的苦難のため10代の頃に自活を余儀なくされ、詐欺に手を染めたと話す。

父親が脳卒中で倒れ、小さな商売を営んでいた母親だけでは一家の食事代に事欠いた時に、スレイマンはスターフレックスから詐欺グループに誘われた。「学校に行くのは大変だった。朝食代も昼食代もなかった」と言う。「スターフレックスは、白人から金を引っ張っていると言っていた。自分も真似をして金を稼ぐことができた」という。

政府は7月、ソーシャルメディアの利用とサイバーリスクについて生徒に教えるための全国的な学校プログラムを始動した。

ガーナとナイジェリアは今年、国境を越えた犯罪、特にオンライン詐欺などのサイバー犯罪への取り組みを強化する方針を打ち出した。両国ともサイバー法が導入されており、定期的に捜査を実施しているが、サイバー犯罪捜査を専門とするレックスフィールドの創業者、マイク・ロバーツ氏によると、起訴されることはまれだ。「詐欺行為に対する最大の抑止力は法の裁きだ。人をだまして捕まることはないと思えば、詐欺をやめることはない」と述べる。

<詐欺の手口>

ガーナのサイバーセキュリティ当局は2022年の報告で、オンライン詐欺の摘発件数の大半をなりすましが占めており、これはソーシャルメディアのアカウント作成が容易になったためだと分析した。

英国のサイバーセキュリティ企業ソフォスX―Opsの研究者、ショーン・ギャラガー氏は、ガーナなど西アフリカ地域の犯罪者は仮想通貨のアカウントを使って送金するなど、中国のロマンス詐欺のテクニックを真似ていると指摘した。

同氏によると、フェイスブックやツイッター(現X)のハッキングされたアカウントを売買する市場があり、仮想通貨や現金で購入することができる。

他のソーシャルメディアのアカウントからコピーした写真などを使い完璧なプロフィールを作り上げる場合もあり、こうした仕組みは既に産業レベルに達しているという。

ニューヨーク州で医療費請求会社を経営するシングルマザーのティナさん(57)は、2019年に出会い系サイトでレイ・ディクソンと名乗る宝石の専門家と知り合った。航空券や家賃、生活費などのためにお金が必要だと言われ、2年以上にわたり計20万ドルをだまし取られた。

友人や銀行からお金を借りまくり、送金をやめたのは何もかも無くしてからだった。相談を受けたロバーツ氏が捜査機関などと協力して調査や追跡を行い、ティナさんがお金を取り戻せるよう手助けしている。追跡の結果、詐欺を働いたのはガーナの犯罪ネットワークだったことが分かった。

スレイマンは、ティナさんのような女性のことを考えると自己嫌悪に陥るという。1年以内には詐欺から足を洗うと決心し、大学に行くために毎月200ドルを積み立てている。それでも「今のところ他に選択肢はない。病気の父を看病し、母を助けなければならないから」と─。

(Bukola Adebayo記者)
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記事リンク(引用元・画像あり)はこちら→https://jp.reuters.com/article/ghana-tech-crime-idJPKBN2ZR08Z?feedType=RSS&feedName=special20
 
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