白昼強盗に関与の男が裁判で明かした“闇バイトの底なし沼の怖さ”「5分後に突入」犯行の瞬間まで指示出していた“ルフィ”とのやり取りを語る(TBS NEWS DIG)

 2023年8月29日
2023年8月28日21時23分付け 「TBS NEWS DIG/MBS毎日放送」記事が公開されました。

大規模な特殊詐欺グループも主導していたと言われる「ルフィ」。
そのルフィに雇われた「闇バイト」であった伊藤一輝被告の裁判が行われました。

同被告は、当初は「闇バイト」で強盗に関与。
強盗は未遂に終わるも建造物侵入未遂容疑で逮捕・起訴され、
保釈されると再度ルフィから強盗を持ち掛けられ、
自分はできないと断るも人集めを依頼されて、
断れずに今度は自分で闇バイトを募ってしまいます。

結局、人集めだけを手伝ったつもりが、
ルフィの指示を現場に与えて動かす「ボス」として強盗に関与してしまうことに。
この事件はルフィが「オーナーと通じていて保険金を貰うための行為だから被害者はいない」として
騙されていたとは主張していますが、
強盗で主導的な役割を果たしてしまったので、当然求刑は重くなります。

しかも、強盗で奪ったものをさらに奪われたとして約束の報酬も貰えず、
結局闇バイトは儲からないと悟って足を洗うかと思いきや、
今度は自分が集めた闇バイトと共に別の強盗事件を起こすなど、再度主導的な役割で犯罪に関わってしまいます。

この記事のタイトルで「闇バイトの底なし沼の怖さ」とあるように、
当初は従属的な立場での実行犯から、リクルーター・指示役のような役割へと、
犯罪を止めたくて実行犯を断っても、むしろ組織内での立場が上がっていく恐ろしさを感じます。
ただ後半は、実質ルフィと決別しても犯罪を犯しており、
何よりも恐ろしい”沼”なのは、自分の中で犯罪への関与が当たり前になる、モラルハザードの沼だということも分かります。

ここまで行ってしまうと、厳罰でしっかり更生してもらうしかありませんが、
結局「闇バイト」に応募してしまうところから、この”モラル崩壊”は始まっていることは否めません。
家族や周囲の若者たちにも、この恐ろしい教訓をぜひ周知してください。

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白昼強盗に関与の男が裁判で明かした“闇バイトの底なし沼の怖さ”「5分後に突入」犯行の瞬間まで指示出していた“ルフィ”とのやり取りを語る

「ルフィと呼ばれる者の指示に従いました」

8月21日の初公判でこう述べたのは、2022年3月~5月にかけ関西で複数の「闇バイト強盗」に関与したとされる伊藤一輝被告(30)である。大阪地裁で連日行われた裁判からは、広域強盗事件の元締めとされる“ルフィ”が、関西の強盗事件をも影で操っていた実態などが浮かび上がってきた。

■質店侵入未遂や時計販売店強盗… 複数の“闇バイト事件”で起訴の伊藤一輝被告
起訴状によると、伊藤一輝被告は、▽去年3月に滋賀県大津市の質店に強盗目的で侵入しようとした罪(建造物侵入未遂罪)、▽去年5月に京都市中京区の時計販売店で高級腕時計を奪った罪(強盗罪)、▽同じく去年5月に大阪・ミナミで、パチンコ店従業員から現金を奪おうとしてケガをさせた罪(強盗致傷)などに問われている。

検察側は一連の事件で伊藤被告の役割は、実行役→指示役→首謀者へと変化していったと主張。伊藤被告側は、大津と京都の事件では「公訴事実は争わないが関与の度合いについては争う」とし、ミナミの強盗傷害事件では「実行犯らとの共謀は成立しない」と無罪を主張している。

そして“ルフィ”を名乗り京都の強盗事件を首謀したとして、同じく強盗罪で逮捕・起訴されているのが、フィリピンに拠点を置いていた特殊詐欺グループの幹部・今村磨人(きよと)被告(39)だ。今村被告は、今年1月に千葉県で起きた強盗傷害事件でも起訴されているほか、同じく今年1月に東京都狛江市で発生し90歳女性が死亡した強盗致死事件などへの関与も疑われている。

■離婚や事業が暗転…出会ったのが“闇バイト”
まず伊藤被告は、犯罪実行者の募集、いわゆる“闇バイト”になぜ応募してしまったのだろうか。

被告人質問によると、伊藤被告は2016年に2回目の結婚をし、2人の子どもも生まれた。2018年には自ら会社を設立。事業を軌道に乗せ、多い時には年間の売上が1億円を超えていたという。20代ですでに、順風満帆な人生を歩んでいるかのように見えた。

しかし、妻の不倫が発覚。妻は家を出ていき、伊藤被告は1人で子ども2人の世話をすることになったが、子育てと事業をうまく両立できず、会社の経営は悪化していく。さらに、妻とは離婚に至ったが、子どもの親権も妻に渡ってしまった。一時は2000万円を超えていた貯金も、趣味の腕時計購入や食事、さらには事業の失敗で消えていき、借金だけが増えていったという。

人生の歯車が狂いだした時、出会ったのが“闇バイト”の存在だった。

■「5分後突入」犯行直前まで指示を出す“ルフィ”
伊藤一輝被告「1回で高額の報酬を得られれば、“元の場所”に戻れると思った」(8月24日の被告人質問より)

去年3月、ツイッター(現:X)で強盗の闇バイトを見つけて応募。当初は「King」というアカウント名の人物とメッセージアプリ「テレグラム」でやり取りしたという。

King「条件どうしますか」
伊藤「やりたいです。報酬どのくらいですか」
King「最低200(万円)です。時計、盗れるだけ盗ってください」
(8月22日の証拠調べより)

その後、やり取りする相手が、別の人物“ルフィ”に変わった。

ルフィ「はじめまして。仕事の件で連絡しました」「伊藤君がボスで動いてもらいます」
(8月22日の証拠調べより)

ルフィは、滋賀県大津市の質店のオーナーが自らと“グル”であり、強盗に入ればオーナーも保険金をもらえるなどと説明。ドライバーを含め他の2人とともにその質店を襲うように指示したという。その2人もルフィが用意した人物だ。

伊藤一輝被告「どこどこのショーケースを狙えと言われた」「ドキドキで怖かったです」(8月24日の被告人質問より)

今年3月13日、決行の日。伊藤被告とルフィは犯行の瞬間も、テレグラムでやり取りをしていた。

ルフィ「準備できたら教えて」
伊藤 「行けます」
ルフィ「5分後突入。17時40分」
伊藤 「了解です」
(8月22日の証拠調べより)

伊藤被告の指示で、共犯者が質店の扉にコンクリートブロックを投げつけるも、扉は割れなかった。

伊藤 「扉 開けませんでした」
ルフィ「何とかしてほしい 頼みます」
(8月22日の証拠調べより)

強盗は失敗に終わり、伊藤被告は逮捕・起訴されるも、去年3月末に保釈された。

■「人だけでもいいから紹介して」ルフィからの再びの“誘惑”
伊藤被告によれば驚くべきことに、釈放の数日後にルフィからテレグラムでメッセージが来たという。

ルフィ「出てこれたんや」
伊藤 「だましたんですか」
ルフィ「オーナーが裏切ったんだよ」「人だけでもいいから紹介してよ」(8月24日の被告人質問より)

新たに強盗への勧誘を受けた伊藤被告は、いったんは断ったものの…

伊藤一輝被告
「人(集め)だけならいいかなと思ってしまった。2人ぐらい紹介した」(8月24日の被告人質問より)
 結局、ルフィの頼みに応じてしまう。ここが“分岐点”だったのだろう。一度足を踏み込めば、たとえ失敗しても“誘惑”に抗えなくなる闇バイトの怖さが垣間見える。

 伊藤被告がツイッター(現:X)で募集をかけたところ、中村陸哉被告(21)や今泉恵子被告(46)が応募。被告が2人をルフィに紹介すると「伊藤君が集めた人に、俺の指示を伝えてよ」と改めてメッセージが来たという。ルフィからはターゲットとする店や強盗方法、日時など詳細な指示が届き、伊藤被告はテレグラムのチャット機能で中村被告や今泉被告と共有した。被告人質問によれば、ルフィは店内の写真や図面まで送ってきたほか、大津の事件の際と同様、“時計店の経営者と裏でつながっている”という話もしたという。

 もちろん経営者とルフィの関与など一切なかったことは確認されているが、伊藤被告はルフィの説明を信じた。証拠調べによれば、伊藤被告の携帯電話のメモアプリには「今回の件はオーナーがグルになりますが、店員は知らないし、すぐに警察に通報されるので迅速に」「ガラスを叩き割る時は、躊躇しないでください」などの文言が残っていたという。

 ちなみに伊藤被告はテレグラム上で、「みず」という名のアカウントから中村被告や今泉被告にメッセージを送っていた。

 ルフィが当初指定した日時からは少し変更が生じたものの、去年5月2日、強盗は決行された。中村被告と今泉被告が、京都市中京区の烏丸通に面した時計販売店を襲い、ロレックスの腕時計41点(販売価格 約6900万円相当)を奪う。中村被告がハンマーを振り上げ店員を脅した上でショーケースを次々と叩き割り、今泉被告が時計をリュックサックに入れていく。まさに“白昼堂々”の強盗だった。

 伊藤被告は強盗成功をルフィに報告。すると「とりあえず大阪の方で現金と交換するから向かってほしい」とメッセージが届いた。指定の場所は吹田市内のサービスエリアだったが、そこに到着した中村被告が、何者かから暴行を受け時計を奪われてしまう。伊藤被告がルフィにそのことを伝えると、ルフィは驚いた反応を示したという。

 ルフィ「持ち逃げした者を捕まえる。かわいそうだから少しお金を渡すよ」(8月24日の被告人質問より)

 伊藤被告の口座には後日、ルフィ側から数十万円の報酬が振り込まれたが、その後は伊藤被告とルフィとの連絡は途絶えた。そもそもルフィが伊藤被告に約束通りの報酬を支払うつもりだったのかは、定かではない。

■ルフィとは決別も…その後の“闇バイト事件”は主導的役割か 被告は一部無罪を主張
ここで足を洗っていれば…。伊藤被告は“闇バイトは結局、金にならない”と思い始めていたともいう。しかし被告はその後も、京都の時計強盗事件で共犯した中村被告らとともに、ズルズルと別の犯罪に手を染めてしまう。

京都での強盗から約10日後には、大阪市北区で男性を営利目的で連れ去ろうと車に監禁しケガをさせる事件を起こした。さらにその直後には大阪市浪速区で、現金を奪おうと景品交換所から出てきたパチンコ店従業員を襲いケガをさせる事件も起こしたとされる。そして今年6月、伊藤被告は大阪府警に逮捕された。

検察側は、両方の事件で伊藤被告は“犯行の全体像”を描き、中村被告ら実行犯らに指示する立場だったと主張。

一方で伊藤被告側は、大阪市北区の事件では「HJ」(ルフィとは別人)を名乗る人物が首謀者の役割を果たし、被告の役割は従属的だったと主張。大阪市浪速区の事件については、▽最初にインターネットカジノを襲うことを提案したのは確かだが、具体的な計画や指示ではない ▽パチンコ店への“ターゲット変更”なども中村被告が決めたことで共謀は成立しない として無罪を訴えている。

■伊藤被告「今後何があっても犯罪に関わるようなことはしない」
8月28日に行われた裁判で、検察側は京都の時計強盗について「確かにルフィとの関係でいえば従属的だが、実行犯との関係でみれば重要で主導的な役割を果たした。粗暴極まりない悪質な犯行で結果は重大」と断罪。他の事件と合わせ、懲役15年を求刑した。

裁判の最後に、伊藤被告は以下のように述べた。

伊藤一輝被告
「今回このような事件を起こしてしまったこと、関わってしまったこと、毎日反省をし、後悔をしています。被害者の方には申し訳なかったと思っています。自分のことしか考えておらず、全然周りが見えていませんでした。今後何があっても犯罪に関わるようなことはしません」
(8月28日の最終陳述より)

経済的・精神的苦境に立たされていたという背景はあるが、伊藤被告が闇バイトの世界に足を踏み入れ、社会に不安を与える凶悪強盗に関与した事実に変わりはない。裁判で反省の態度は見られたが、ルフィの言葉に疑いを持ち、“悪縁”をもっと早く断ち切ることはできなかったかという思いも拭えない。

大阪地裁はどんな判断を下すのか。伊藤被告への判決は9月1日に言い渡される。     
(MBS司法キャップ 松本陸)
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記事リンク(引用元・画像あり)はこちら→https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/686507
 
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